10月26日(木)    (マドリッド)  P17
 8 プエルタ・デル・ソル(太陽の門)

写真9 プエルタ・デル・ソル、ゼロ点表示

 15世紀の城壁は現存していないが、旧市街地の端部を示し、マドリッドの「へそ」と言える。当時のイスラム世界とキリスト世界の分岐点であり、時代が変遷しても古いものを保存し、施設の一部を取り入れて生活の一部を構成。歴史的に街は何度も拡張され続けたが、もともとの旧市街地を大切にし、その思い出を忘れない。その地域に特徴となるものを残すことが未来への財産となる。

9 熊のモニュメント
 マドリッドの紋章は、山桃を食べている熊の像。こうしたモニュメントを通じて、エピソードをつくるのは街並みや公園整備のポイントの1つ。地域の歴史を語る材料をさりげなく提供することで人々の理解と愛着が生まれる。地域を愛した様々なエピソードを積極的につくろう。


写真10 マドリッドのシンボル

10 マヨール広場

写真11 マヨール広場

 パリのヴォージュ広場と似ており、囲まれ感、
見る・見られるの関係性を実感できる。生活の場として日常の延伸上にあり、そこに集う人々に見る楽しさを与えてくれる。大切なのは地下駐車場の設置など車を排除した人間中心の街づくり。
 
11 プラド通り

11 プラド通り

写真12 プラド通り
 カステリアーナ大通りから続く、片側3車線と広い中央分離帯。緩速車線、広い歩道と緩衝緑地帯、道路の空間は視点と視対象の両性質がある。公共事業は、時間軸をできるだけ長く取るべきで、それが世紀を超えて語りつがれるものとなる。
12 スペインの川づくり

写真13 マンサナレス川
 マンサナレス川は隣接公園と一体化しており、直護岸と2割の多自然型護岸が共存しており、水鳥などの餌場や、観察デッキもあった。河川は水と緑の空間として、道路以上にスケール観と時間軸をもって対応すべき対象と思う。

《感想》
 コスタデルソルでシエラネバダ山脈から一気呵成に地中海へ流下する砂防河川、マラガの涸れ川につくった噴水等各地で自由な発想の川づくりを見ることができた。技術的に云々ではなく、基本的には何もしないが、するとなったら徹底的にやる、という河川への思いを感じた。
 この研修でスペインの国づくりに対する強い意気込みと歴史的伝統が国民のプライド意識を醸成し日常生活に生かされているのを実感した。自分の国に誇りと愛着を持つことが公共事業の基本である。
 スペインがキリスト教とイスラム文化を大切にしているならば山形は自然風土や歴史的施設を尊重すべきと考える。出発前、昼休みに散歩し千歳山の遠望や光禅寺の庭等を見たが、2週間後どんな見方に変わるか楽しみにしていた。帰形後、たまたま天気がよく、紅葉も終わりに近づいていたが、スペインのカテドラルやアルカサルと比べても、(千歳山は)十分勝てる、そんな気分になった。    
            (吉田 郁夫)
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